日本が台湾を植民地統治した歴史について批判的に検証したNHKスペシャル「JAPANデビュー アジアの〝一等国〟」(4月5日放映)に対し、台湾で困惑や不満の声が広がっている。60年余りが過ぎても台湾での日本統治への評価や感情に複雑なものがあることをうかがわせている。
先住民族の発言部分、議論の的
NHKは4月から長期企画「プロジェクトJAPAN」を始めた。近代日本が欧米に追いつこうとして孤立し、戦争に突入した歴史を描くシリーズ「JAPANデビュー」はその一環で、台湾部分はシリーズ第1回。日本統治下の差別、抵抗運動への弾圧、皇民化教育に焦点を当てた。
これに対し、台湾で「内容が偏っている」と番組への抗議行動が広がり、日本語教育を受けた世代の親睦会「友愛グループ」や短歌愛好者で作る「台湾歌壇」は抗議や訂正要求をNHKに送った。
日本では自民党の一部が「反日的な番組」と批判を展開。小田村四郎・元拓殖大学総長ら約1万人が1人あたり1万円の慰謝料を求める民事訴訟を東京地裁に起こし、近く弁論が始まる。
一方、日本ジャーナリスト会議は「表現の自由への恫喝と干渉にあたる」と表明。民間団体「開かれたNHKをめざす全国連絡会」も「放送の自由の守り手として責務を果たすべきだ」とNHKを支援する側に立った。
議論を呼んだ番組内容の一つが、1910年、台湾の先住民族パイワン族の人々をロンドンの日英博覧会に連れて行った経緯を検証する「人間動物園」と題した部分。NHKは渡英した人々の出身地、屛東県高士村(パイワン語名=クスクス村)を取材した。
当時の欧州に植民地文化を見せ物的に取り上げる風潮があったのは事実だ。しかし村長の荘来金さん(50)は「先達が海外で我々の文化を広めたことは村の誇りとして語り継がれている」と話す。村民のこうした感情は番組で紹介されなかった。
渡英した男性の娘、高許月妹(同=チャバイバイ・バブア)さん(79)は番組の中で父親の写真を見て涙を流し、パイワン語で語る。「悲しいね、この出来事の重さ、語りきれない」と字幕が出た。
だが、朝日新聞の取材に高許月妹さんは「涙を流したのは父を懐かしく思ったから」と話した。パイワン語の専門家が発言を改めて訳したところ「何と言えばいいか。(父のことは)よく分からない」となり、字幕とは符合しない。番組では発言の背後で「この重さ、話しきれないそうだ」と日本語の声が流れるが、これは日本語が分かる近所の男性の声だった。
高許月妹さんは「取材趣旨の説明はなく、突然来て父親の写真を見せられただけ」と話す。NHKは「発言と字幕は違っていない。見せ物になったこともディレクターが説明した」と反論している。
これは16日掲載だっけか。
ディレクターの反論の部分もあったけれど、これで十分だよね。
一応公正を期すという意味で、エントリーしときます。