牧太郎の大きな声では言えないが…:社説に盾を突く!
「おやじも、おふくろも忙しくて、小学校の運動会は料亭のおかみと一緒に弁当を食べていたよ」と彼は笑った。
料亭の幕の内弁当は確かにうまい。でも、家庭の味がしない。第一、小学生がおかみと一緒では窮屈だろう。
僕は料亭の息子だが、運動会の昼飯はおふくろが作った卵焼きにソーセージ、芋の煮っ転がし、それにシャケのおにぎり。普通の味だった。今となっては、新聞紙の上でおふくろと食べた味が懐かしい。「おかみと一緒」は彼の気の毒な境遇の一面でもある。
彼? もちろん麻生太郎さんである。父は麻生セメント会長、麻生太賀吉さん、母・和子さんは吉田茂元首相の娘。「麻生の七光り、吉田の七光り、併せて十四光り」と彼はおどけたが「気の毒な境遇」は同時に「将来を約束された境遇」でもあった。
母・和子さんは彼の初陣で「太郎が大人になった時……」で始まる戦時歌謡「太郎よ」のテープを探し出し「これをテーマソングにしたら」と言ったりして……どこにでもいる“親ばか”ぶりだったが、ともかく「華麗なる一族」であったから議員になれた。
そんな麻生さんに今さら「庶民派」を求めるのは無理というものだ。毎日新聞の「首相の夜会合 公人としての自覚が問われる」という社説に首をかしげている。「連日のようにホテルのバーやレストランで秘書官や側近議員などと懇談を続けている。ここ1カ月間で公務を終え、私邸に直行したのはわずか4回だけ」と批判する。首相がホテルのバーで飲むのがそんなに悪い事なのか? 首相は家に直行しなければならないのか?
「ホテルのバーで」は境遇から来る彼の癖である。どうでもいいじゃないか。麻生さんがガード下の焼き鳥屋で酒を飲めば庶民派とほめられるのか?
当コラムで「2世議員が日本を劣化させた」と言い続け「首相のせがれがまた首相」という異常事態をわらった。「2世議員は首相にするな!」と主張せず、麻生さんが首相になったら「酒の飲み方」に文句を付ける社説……。潔くない。
追及すべきは「税金を納めない人にも一律に定額給付する経済政策」である。税金を払わない人にまで金券を配る。大枚2兆円。選挙前の合法的買収行為じゃないのか。社説は政策の中身と何度でも対決すべきだ。
ああ、どうしよう。ついつい、無敵の境遇?「社説」に盾を突いてしまった。
http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20081104dde012070034000c.html
税金も払えないほどの貧乏人に給付したところで景気対策になるとは思えないが、だからって、貧乏人には給付するなとまでは思わんが。