<米大統領選>人種超え「変革」選択 オバマ氏当選
4日投票の米大統領選で民主党のオバマ上院議員が勝利したことで、米国民は「ブッシュ政権8年間」に明確な決別を告げた。イラク戦争の長期化や経済の先行き不安などで閉塞(へいそく)感を強める米国民は、「変革」を掲げたオバマ氏に米国の再生を託した。歴史的な人種の壁を乗り越えた初の黒人大統領の選出により、米国は新たな時代に一歩を踏み出す。
選挙戦の流れを決定づけたのは経済問題だった。8月に米国の失業率は6.1%と過去5年で最悪を記録。9月中旬からの金融危機の深刻化とウォール街の株価大暴落で有権者の「変革」への期待に火がつき、オバマ氏が支持を伸ばした。
オバマ氏は危機に際し、「(1929年の)大恐慌以来、最も深刻な金融危機」とする声明を発表し、事態の深刻さを強調した。一方のマケイン氏は、「米経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は依然強い」と主張。有権者の将来への不安を前に「経済オンチ」ぶりを露呈した。
国民の不安と不満が高まるなか、オバマ氏は有権者の「反ブッシュ」感情を効果的に支持拡大につなげた。9月下旬のテレビ討論会で、金融危機は「ブッシュ大統領の8年間の失政の結果」と批判し、マケイン氏をブッシュ大統領と一体化する戦術で攻めた。
選挙戦では米国民の求める変化の「度合い」も問われた。オバマ氏は経済における「政府の役割」や福祉政策の充実を打ち出した。目指すのは米国の「抜本的な変革」だ。
これをマケイン氏は「大きな政府」「危険なリベラル(左派)」と批判し、自らは共和党の基本路線を踏襲する「小ぶりな改革」をアピールした。だが米メディアの出口調査によると、候補者選びで重視することに「変化」を選んだ人は35%で、そのうち9割がオバマ氏を支持。米国民は、より大きな変化を求めたといえる。
マケイン氏は共和党初の女性副大統領候補としてアラスカ州のサラ・ペイリン知事を起用。話題を集めて一時は支持率でオバマ氏を上回ったが、「資質」に疑問が集まり、効果は持続しなかった。
選挙戦を通して、米国自身の「変化」も試された。オバマ氏は黒人と白人の両親を持ち「人種を超えた(ポストレイシャル)候補」とも呼ばれる。白人を敵視する旧来の黒人指導者らとは一線を画すからだ。
オバマ氏は黒人奴隷の子孫ではない。しかし、米国民がオバマ氏を最高権力者に選んだことは、奴隷制度という歴史の「負の遺産」を引きずる米国にとって歴史的な大転換と言える。
出口調査によると、今後数年間で人種問題が「改善される」と予測した人は約半数。その7割がオバマ氏の支持者だった。だが残る半数は「同じ」か「悪くなる」と回答。人種問題をめぐる認識の格差を浮き彫りにした。
選挙前の各種世論調査によると、オバマ氏の主な支持基盤は若者や大卒以上の高学歴層、黒人だった。実際の投票では、社会的価値観において保守的で人種の違いに敏感だといわれる労働層も、政策面での期待感からオバマ氏を支持した。米国そのものが「変化」を起こした選挙だった。
初の「黒人」大統領!とか書いてるマスコミが多いけれど、ちょっとなー