橋下知事の過激発言に批判高まる、身内も「行き過ぎ」
このところ、大阪府の橋下徹知事の発言が過激さを増している。「このざま」「予算はつけない」「クソ」……。舌鋒(ぜっぽう)は主に教育委員会に向けられる。あまりの激しさに府議会の与党会派からも「行きすぎだ」との声が出始めた。
知事の教委批判は、全国学力調査の結果が発表された8月29日の「このざまは何だ」発言から、急速にボルテージがあがった。調査対象の小6と中3の国語と算数・数学の結果が、大阪府はいずれも30、40位台だった。
橋下知事は、市町村ごとの結果が公表されないことをいいことに各教委が対策をとらないのが成績低迷の主因だと断じ、個別に結果を公表するよう市町村教委に圧力をかけ始めた。7日のラジオの公開生放送では、「クソ教育委員会」発言が飛び出し、公表しない教委には予算配分で「差をつける」と言い放った。
府の綛山(かせやま)哲男教育長はたまらず、8日に知事室を訪れ反論した。綛山教育長によると、「クソ」発言について「知事の影響で学校の子どもたちが使ったらどうするのか」と迫ると、知事は苦笑い。「予算を人質に取って自分の考えを通すやり方は間違っている」という指摘には、知事は「市町村教委に対し考えを伝えているだけ」と答え、話は平行線で終わったという。
知事の圧力発言の連発に、大阪府北部の市の教育長は「恫喝(どうかつ)だ」と憤慨する。知事の求めには応じず、学力調査の結果は公表しないつもりだ。「序列化につながるし、知事発言を認めてしまえば、今後の教育問題に影響を与えてしまう」
府議会からも批判が出だした。知事を擁立した自民府議は「タレントで生き残ってきたため、常に注目を浴び続けなあかんという強迫観念がある。泳ぎ続けないと死んでしまうマグロみたい」と分析。今回は「行きすぎ」としたうえで、「傍若無人の独裁者を続けて、周囲の協力を得られなくなって一番困るのは自分やのに」と心配する。
別のベテランの自民府議は「ものには言い方がある」と秘書を通じて知事に苦言を呈した。
反論や苦言が効いたのか、知事は8日、報道陣から「予算をちらつかせて市町村を従わせるやり方は中央集権的」と質問されると、「やり方としてまずいというのなら変える」と述べた。
元鳥取県知事で慶応大教授の片山善博さんは、予算権を盾に圧力をかけようとした手法を「許されない」と言う。「『江戸の仇(かたき)は長崎で』というわけにはいかない。市町村が結果を公表しないからといって、予算で差をつけるのはスジが通らない。それが許されれば、国は都道府県に、都道府県は市町村に、あらゆることを押しつけることになる。まさにファッショだ」
元吉本興業常務でフリープロデューサーの木村政雄さんは「仮想敵をつくって自分の考えをアピールするやり方は決して悪くはない。ただ今回は無理があるし、やや乱暴。府民の共感は呼ばない。硬軟取り混ぜてアプローチしないと。強く当たるだけでは現場を萎縮(いしゅく)させ、改革の効率が悪くなるだけだ」と話す。
◇
〈橋下知事の発言〉
「このざまは何だ。教育委員会は最悪だ。民間なら減給は当たり前」(29日、全国学力調査の結果を受けて)
「市町村の教育委員会は甘えている。結果が表に出ないから」(30日、大阪府貝塚市のシンポジウム)
「市町村教委が公表しないとか自由にやるなら府教委は解散する」(6日、大阪府枚方市の日本青年会議所関連のフォーラム)
「あのクソ教育委員会のメンバーが、過度な競争が生まれるという理由で発表しない」(7日、大阪府箕面市でのラジオの公開生放送)
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200809090015.html
橋下の言葉遣いは兎も角として、教育委員会がクソなのは事実。