<胡中国主席>対日重視の姿勢鮮明に 対中包囲網突破狙う
7日の日中首脳会談に臨んだ中国の胡錦濤国家主席は、10年前の江沢民国家主席(当時)が訪日時、「歴史問題」を前面に打ち出したのとは対照的に、「戦略的互恵関係」の構築に向けて対日重視の姿勢を鮮明に示した。中国が目指す「和諧(調和の取れた)社会」の実現には日本との関係強化が欠かせないとの認識があるうえ、チベット問題への対応で世界的な批判が高まる中、訪日を「対中包囲網」突破の足がかりとする狙いもありそうだ。【成沢健一】
昨年10月に第2期胡錦濤指導部が発足して以来初めての外遊先として日本を選んだ胡主席は、東京に到着した6日に早速、胡主席が受け入れ責任者となった84年の日本青年3000人訪中団のメンバーと会見した。また、福田康夫首相との非公式夕食会でパンダの貸与を表明した。
これらは、チベット問題や冷凍ギョーザ中毒事件、東シナ海ガス田問題で悪化した対中世論の改善を強く意識したものとみられる。
「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明では、「最も重要な2国間関係の一つで、(両国は)世界の平和に厳粛な責任を負っている」と明記した。エネルギーや環境保護、貧困など地球規模の課題についても「日中両国が協力し、解決に貢献する」とアピールした。
一方、国家の威信をかけた北京五輪の開幕が3カ月後に迫る中、世界を回った聖火リレーで示されたチベット問題への厳しい批判は、中国指導部にとって想定外の事態だった。
4日にチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の代理人との対話に中国側が応じたのは、事態打開に柔軟に対応する姿勢を示しながら、首脳会談で日本の理解を引き出し、中国の主張を世界に発信する狙いがあったことは間違いない。
さらに、日本から北京五輪成功に向けた支持を取りつけることで、欧州各国の首脳が開会式のボイコットを示唆していることをけん制しようとする思惑もあったと言える。
日本は恩を売ったつもりでも、相手は利用しているだけだがな。