<厚生年金>給与記録改ざんが発覚 社保事務所の関与も
会社員が加入する厚生年金の受給額に大きく影響する「標準報酬月額」の記録に誤りが含まれている可能性が出ている。全容は不明だが、総務省の年金記録確認第三者委員会は07年末で、報酬月額が不正に引き下げられたり消されたケースを7件確認した。これとは別に、東京都内の会社社長が毎日新聞の取材に、経営難の中で社員の報酬月額に改ざんがあったことを認め、社会保険事務所の関与も証言した。
この問題は民主党も追及する方針で、第2の年金記録問題に発展するとの声もある。
改ざんがあったのは貿易関連会社。社長(64)によると、経営が悪化していた94年ごろ、社員10人の年金保険料が支払えなくなり、都内の社会保険事務所の職員から電話で「滞納分を現金で持参するように」との指示を受けた。数十万円を2、3回に分けて運んだ。
その後は社員のほとんどをリストラし、経営も回復、社会保険事務所から連絡もなかった。ところが、03年に元社員の一人から「自分の標準報酬月額が過去2年分、30万円から(当時最低額の)8万円に下げられている」と指摘され、当時の社員全員の年金データが改ざんされていたことに気づいた。
元社員には会社が支払わずに済んだ分を渡したが、他の元社員には改ざんの事実は伝えておらず、このままでは年金額は減る。社長は「改ざんはすべて社会保険事務所がやったこと。元社員が指摘するまで、そんな手口があること自体、知らなかった」と話す。
標準報酬月額は、引き下げられれば、保険料と同時に年金受給額も比例して低額になる。過去の年金データを改ざんし、保険料の滞納額を減らせば、会社は保険料納付が容易になり、社会保険事務所にとっても見かけの徴収率をアップできる。
社会保険庁適用・徴収対策室は「改ざんなど具体的な事実を把握していないのでコメントできない」としている。【中西拓司】
【ことば】標準報酬月額 月給にほぼ相当し、4~6月の平均給与をもとに算出する。9万8000~62万円の30等級に分けられ、現在はそれに保険料率14.996%をかけたものが保険料となる。保険料は本人と会社が折半して負担する。
これが事実だとして、おそらく納付率を上げるために行ったのだろうけれど、実際、厚生年金国民年金問わず、「払えない時」の救済措置が不十分なんだよなー。