李明博氏は日韓の歴史問題まくし立てない
12月19日に行われた韓国の大統領選や北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の行方について、4月まで米国家安全保障会議(NSC)アジア部長を務めた米ジョージタウン大のビクター・チャ教授に、見解を聞いた。
(ワシントン 有元隆志)
韓国の大統領選でハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)氏が当選した要因は主に経済問題だ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は成長よりも分配を重視したが、多くの人はこの戦略で利益を受けなかった。経済成長路線への復帰を求める声が強まった結果、経済成長を掲げるビジネスマンの李氏が勝利した。
政権の路線は金大中(キム・デジュン)、盧武鉉両大統領下で左へと振れたのが、中道右寄りへと移ることになる。
盧政権下で、米韓関係は最悪だったとも言われているが、やや誇張し過ぎだ。韓国軍はイラク、アフガニスタンに派兵したほか、在韓米軍の再編、米韓自由貿易協定(FTA)などよい合意も成立した。
ただ、指導者間の相性が悪かった。ブッシュ大統領は小泉純一郎首相、オーストラリアのハワード首相(いずれも当時)とは相性が良かった。盧大統領との間ではそうはいかなかった。指導者間の相性が合うかは非常に重要なことだ。しかも、「北東アジアのバランサーの役割を果たす」との盧大統領の主張は何ら戦略的なものではなく、米国を困惑させただけだった。
李氏はそうしたことはしないと思う。思想的にも中道右派で、ブッシュ大統領と同じ元ビジネスマンの指導者が誕生することは、米韓関係が新しいスタートを切るのにいい機会だといえる。
外交面での大きな変化は、日本との関係と北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議に出てくる。
私は韓国の人たちに、米国との関係を改善したいと思うなら、日本との関係を良くすることだと何度も言ってきた。米国にとっても、日本と韓国の2国間関係は非常に重要であるからだ。しかし、盧大統領は小泉首相との関係は良くなかった。安倍晋三前首相は改善しようとしたが、うまくいかなかった。
李氏は現実主義者であり、「歴史問題」をまくしたてるようなこともしないだろう。福田康夫首相も同じく元ビジネスマンであり、より良い関係を築くのにいい機会だと思う。李氏にとって就任後間もなく行われる国会の選挙は非常に重要で、選挙戦も激しくなることが予想される。それでも大統領としてまず米国と日本を訪問してもらいたい。順序はどちらが先でも構わない。
李氏は北朝鮮問題でも6カ国協議を通じて米国などとよく調整をして対応するのではないか。
北朝鮮の視点からみると、大統合民主新党の鄭東泳(チヨン・ドンヨン)氏が最も望ましく、逆に無所属の李会昌(イ・フエチヤン)氏は最も望ましくない候補だった。大手建設会社、現代建設の社長だった李氏が相手になるのは必ずしも悪いことではない。10月に南北首脳会談が行われたとき、金正日(キム・ジョンイル)総書記は盧大統領よりも韓国のビジネス界のリーダーとの会話に多くの時間を割いた。
6カ国協議に関しては、寧辺にある核施設の無能力化、核計画の申告ともに遅れている。最も避けたいのは、核放棄に向けた「第二段階の措置」が無能力化だけ完了し、申告が全く行われないことだ。
北朝鮮にとってこれまで戦略的な決断をする必要はなかったが、申告は彼らにとって初めて戦略的な決断を迫られる問題だ。保有する爆弾の数、プルトニウムの量を言わなければならないうえ、ウラン濃縮による核計画、シリアとの関係などすべてを明らかにしなければならない。
無能力化だけ進み、申告で何ら進展がないことは誰も望まない。申告は非常に重要だが、難しい問題であるゆえ、4月にずれ込んだとしても、時間をかけて取り組んだ方がいいかもしれない。申告内容の検証という問題もあるが、申告がなければ検証の機会もない。一歩一歩進む必要があり、まずは完全な申告の実現に集中すべきだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071230/kor0712301401000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071230/kor0712301401000-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/071230/kor0712301401000-n3.htm
始まってみないとね。
まあ、実際に問題にしなかった大統領は居なかった事は踏まえておこう。