朝日、読売に叱られた民主党 額賀喚問トーンダウン
守屋武昌・前防衛事務次官の逮捕を受けて、「宴席同席問題」をめぐる守屋容疑者と額賀財務相に対する与野党の攻防が続いている。与党側は喚問の中止を求める一方、新聞や野党からも「喚問を決めたのは間違いだった」との声が飛び出し、喚問を主導している民主党も「(野党の)意見には十分に耳を傾けながら対応していくことが必要」とトーンダウン気味だ。
慣例を押し切って、喚問の場に引き出す必要があったのか
「宴席問題」が、新たな局面を迎えている。自民党の小坂憲次・国対筆頭副委員長は2007年11月29日午前の会見で、宴席の出席者から「額賀氏は出席していなかった」との証言を新たに得たと発表したのだ。この結果、「出席した8人のうち(守屋容疑者と「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者=収賄容疑で再逮捕=を除く)6人から証言を得た」として、自民党側は自信を深めている。
一方、同日行われた参院財政金融委員会の理事懇談会では、自民・公明両党が、全会一致という長年の慣例を破って証人喚問を「強行採決」したことに抗議、喚問の中止を求めた。これに対して、峰崎直樹委員長(民主党)は「事実解明は国民が求めている」として、予定通り12月3日に喚問を実施する考えを示した。
小沢一郎代表も、朝のテレビ朝日系情報番組「スーパーモーニング」で、
「額賀氏に(宴席出席の事実がが)『ないならない』とはっきりさせたほうがいい」
と、理解を求めた。
だが、喚問実施については、メディアや「身内」であるはずの野党からも、疑問を呈する声が相次いでいるのだ。
例えば、11月29日の北海道新聞は社説に「刀の抜きどころが違う」との見出しを掲げ、
「喚問の目的は会合への出席の有無を確認することだという。これはいかがなものか」
と、喚問によって問題が矮小化されることを懸念し、朝日新聞も
「(額賀氏への)疑いが晴れたわけではないが、野党は引き続き通常の国会質疑で財務相にただすことができる。しかも、宴席に出ていたかどうかの問題だけで、あえて全会一致の慣例を押し切ってまで、喚問の場に引き出す必要があったのだろうか」
と、喚問の意義に疑問符を付けた。読売新聞も、政治面の解説記事で
「参院で与野党が逆転した『ねじれ国会』の新たなルール作りに真摯に取り組むべき時に、衆参両院の第1党が『数の論理』だけを押し通そうとするようでは、将来に禍根を残すことになりかねない」
と、民主党の「ゴリ押し」ぶりを批判している。
野党間に足並みの乱れ
野党側からも、11月29日、同様の声が上がっている。
「議決後に守屋容疑者が逮捕されたという変化も踏まえて、再検討すべきではないか」(穀田恵二・共産党国対委員長)
「額賀氏だけの喚問をやって果たして意味があるのか」(亀井久興・国民新党幹事長)
野党間の足並みの乱れが明らかになった形で、これを受けて、民主党側も一気にトーンダウンした。菅直人代表代行は、29日午後の記者会見で、野党側からの発言について指摘されると、
「野党共闘があって初めて参議院の過半数というものがあり、それがあることによって、多くの委員会で国政調査権の発動も可能な訳ですから、野党の仲間の皆さんからご意見が出た場合には、その意見には十分に耳を傾けながら対応していくことが必要なのではないか」
と応じ、「方針転換」を示唆した。
ただ、朝日新聞が防衛省関係者の話として伝えたところによると、守屋容疑者は
「防衛省在職中に面会した相手や会合の同席者、やりとりなどの詳細な内容を長年にわたって日記に記していた」
のだという。日記が押収されれば、自民党と民主党のどちらの言い分が正しかったのか、さらにヒートアップしそうだ。
あー、あれだ。
ちょっと力を手に入れたと勘違いすると暴走するタイプ