民主党の責任―「政局より政策」が王道だ
「本当の勝負はこれからだ」。参院選挙で民主党が大勝した後、体調不良で静養していた小沢代表が仕事に復帰し、そう党内にげきをとばした。
「秋以降の国会で参院を大きな戦いの場にしながらも、みんなで最終の目標に向けて頑張っていきたい」
今回の大勝は、地方の疲弊に照準を合わせた小沢氏の戦略が功を奏したのは確かだが、やはり自民党の「敵失」に負うところが大きかったと見るべきだ。
マニフェストで打ち出した最低保障年金や、農家への戸別所得補償制度などのアイデアにしても、財源などにあいまいな点が少なくない。政権をまかせてくれというには、まだまだ力不足だ。
小沢氏が言うように、今回の勝利を政権交代という目標につなげられるかどうかは、今後、どれだけの実績を積めるかにかかっている。
その意味で、初めて第1党の座についた参院での戦いぶりは極めて重要だ。与えられた多数を生かし、共産党や社民党などと連携して、これまで実現できなかった主張、政策を通していくことだ。
抜け穴だらけの政治資金規正法に、参院から改正案を出すべきだ。ほかにも、年金保険料を保養施設の建設などに流用するのを禁止する法案や、最低賃金を引き上げる法案、イラクから自衛隊を撤退させる法案なども考えられる。
「政治とカネ」の疑惑などで、証人喚問や参考人招致を参院で積極的に実現させる。これまでうやむやにされてきたスキャンダルの真相解明を進めることも、不可能ではない。
もちろん、衆院は与党が圧倒的な多数を持つから、参院で法案を可決しても成立はしないかもしれない。だが与党も、参院で民主党の協力がなければ政策を実現できない点では変わらない。
どちらの主張が説得力を持つか、世論の支持を得られるか。その勝負になる。反対を連発して政治を停滞させれば、その責めを負わねばならない。それが参院第1党としての、国民への責任である。
民主党の独自色を保ちつつ、政治を前に進める。そんな難しいかじ取りが待ち受けていることを覚悟すべきだ。
2大政党のぎりぎりの議論の末に、どうしても互いに歩み寄れない対立点が明確になってくるだろう。その対立軸を旗印に、両党が政権をかけて次の総選挙を戦う。そんな展開が望ましい。
与党は、安保政策や憲法絡みの問題など、民主党内が割れているテーマで揺さぶりをかけてくることも予想される。
だが、政権を目指すという以上、そうした点も含めて党内の論争をまとめ、政権構想や政策をきちんと打ち出さねばならない。財源や実現へのスケジュール、優先順位を示すことも欠かせない。
「政策より政局」と見られがちな小沢氏だが、いまこそ「政局より政策」を肝に銘じるべきだ。それが政権交代への近道であり、王道である。
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いきなり、お気楽野党っぷりを発揮しているようですが。