弱い者は死ね」という社会に突き進む日本
5月14日の参議院本会議で国民投票法案が与党の賛成多数で可決、成立した。いよいよ、憲法改定への動きが始まった。
この法案を単に憲法改定の手続きを定めたものだから、これで憲法を変えると決まったわけではないという人もいるし、法律の施行は3年後だからあわてることはないという声もあるが、そうではない。
この法律に基づいて次期国会では衆参両院に憲法審査会が設置され、憲法改定のための議論が始まる。実際に国民投票が行われるのは早くて2011年になるが、改定に向けた動きは始まっているのだ。
与党は国民投票法案が成立したといっても自動的に「憲法9条改正」の話になるわけではないと言っているが、そもそも9条を改定するために作られた法律なのだから、そのことが採り上げられることは間違いない。
「戦後60年も経ったのだから、憲法を修正するのは戦後レジーム(体制)の転換だ」という意見は一見もっともらしいが、憲法はそもそも国家の理念を定めたものだ。理念は時間が経っても変わるものではない。
会社でも長生きしている組織ほど理念を変えていない。もちろん経営戦略は変えるが、基本理念を変えると会社はバラバラになる。
「米国軍が押しつけた憲法だから変えるべきだ」と言う人がいるが、それは理屈にも大義にもなっていない。問題は憲法が国民にとっていいか悪いかであって、誰が作ったものかは関係ない。
“日本軍”が米軍の一部になる
国民投票法案の最大の問題点は戦前の言論統制と同じ思想が法律の中に入り込んでいることだ。
この法律が施行されると、公務員や教員は立場を利用して国民の投票行動を誘導するような発言をしてはならないということになるので、「憲法を変えてはいけない」としゃべっただけで逮捕されることになる。
大学教授も教壇で学生に向かって、「この大切な憲法を変えるな」と言えなくなるのだ。こんなおかしな法律があっていいはずがない。
放送事業者も中立を守らねばならず、何も発言できなくなる一方で、テレビコマーシャルに関しては投票前2週間だけを禁止期間としている。つまり、2週間前までは資金力のある政党が世論に訴えかけるコマーシャルを流しまくっても、テレビで議論はできない。
そうなれば、一部の政党が国民の意見を誘導できることになる。
政府はここまでしてなぜ憲法を変えようとしているのか。なぜ、憲法を変える必要があるのか。
おかしなことに自民党の憲法草案では戦争放棄の条項は残して、戦力の不保持を変えようとしている。自衛軍を持つのに、なぜ戦争を放棄するのか。矛盾しているではないか。
これは、自分の国を自分で守ろうという気など実は毛頭ないという証拠だろう。狙いは米国への媚び、へつらいである。
世界の警察を標榜していた米国だが、イラク戦争の泥沼化などで、もはや世界に君臨し続ける体力がなくなってきた。極東の治安維持にまで力を回せなくなってきたというのが本音だろう。
そこで、その役割を日本に押しつけたい。日本が米国の手先として極東の治安を守れというわけだ。要するに、米国が敵と見なして戦う相手とは、集団的自衛権を行使して日本も戦えという意味だ。
だが、現状の憲法では後方支援だけで軍事行動は許されない。そのため、9条を改定して、自衛隊を軍隊に改組し、米軍の極東防衛戦力の一部となりたいのだろう。
戦場に行くのは負け組たち
5月15日の衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数によって、イラク復興支援特別措置法の期限を2年間延長することが決まった。
目的は自衛隊機が援助物資や兵隊、装備を今後も運び続ける必要があるからだという。確かに形式上はイラクのマリキ首相が日本に支援を要請する形になっているが、既にバグダッドでは民間の航空機が頻繁に飛んでいるのだ。そうした状況で、自衛隊機を飛ばす必要があるのだろうか。むしろ、NGOなど民間の支援団体に対して「イラク支援を助けてくれ。日本政府がバックアップするから」と言った方がいいのではないか。
要するに、目的はイラク支援という形を取った米国の応援なのだ。だから、民間の活動ではなく、日本国の自衛隊機が飛ばなければならない。
国民投票法案も同じだ。国を守るためでも、新しい国を作るためでもなく、単に米国への全面追従外交を強化するために他ならない。
もし、憲法が改定され“日本軍”が米国軍の一部になったら、当然ながら日本が戦争に巻き込まれるリスクは大きく高まる。いざ戦争となれば、いま米国で起きていることが日本でも起きる。
現在、イラク戦争で命を落とした米兵は3000人を超えた。しかも、最前線で戦う最下層の兵士の年収はわずか1万5000ドル(180万円)だ。そんな低賃金で命をかけてまで、なぜ彼らは戦場に行くのだろうか。
それは、彼らの米国での年収がもっと低いからだ。年収100万円であれば、180万円は所得倍増だ。そして、低所得者だけが戦争の犠牲になっていく。
日本も米国と同じような所得構造になりつつある。負け組と呼ばれるフリーター、ニートなどの若者たちに対して、勝ち組と呼ばれる人たちはなんと言っているか。
「増税して、生活を追いつめて、働かせろ」
勝ち組にとって負け組は仲間ではない。彼らがどうなろうとも、自分たちさえよければいいというのが新自由主義の特徴だ。
新自由主義政策とは1979年に発足した英国のサッチャー政権が導入した改革で、これが米国のレーガン政権から日本の中曽根政権に引き継がれた。その特徴は、小さな政府と市場原理主義だが、もう一つの柱が金持ち優遇政策だ。一般庶民は増税し、金持ちは減税することが新自由主義政策の基本である。
したがって、勝ち組が兵士として戦場の最前線へ行くことなどない。行くのは負け組ということになる。それは米国を見れば明らかだ。
大学の秋入学は徴兵制の準備か
国民投票法案とともに、もう一つきわめて怪しいのが大学の秋学期入学制度の推進だ。
高校を卒業するのが春なのに、いったい誰が秋の入学に賛成しているのだろうか。4月から入学できる方がいいに決まっている。
表向きは海外留学生を受け入れやすくするということだが、実は文部科学省の強い圧力で、いまや大学は「セメスター制度」で半期ごとに単位を与えるような仕組みに変わっている。半期ごとに単位が与えられるのだから、留学生が9月から入学しても問題はない。
なぜそこまでして秋学期入学にこだわるのかといえば、徴兵制度導入の準備ではないか。秋までの期間は軍事訓練をするのにちょうどいい。
日本はいま戦争への道をまっしぐらに進んでいる。9条改定が通るかどうか分からないが、改定に真っ向から反対しているのは社民党と共産党のみだ。夏の参議院選挙の結果、もし民主党が分裂するようなことになれば、9条改定大連立政権が出来て、改定へ突き進む可能性が高い。
誰もあまり問題にしないが、いま日本は大きな岐路に立っている。
「弱い者は死ね」という冷酷な社会にしたいのか。米国型社会の大原則は経済でも戦争でも同じなのだ。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/o/83/index.html
1.現状でも自衛隊はほとんど米軍の一部。今更何言ってるんだ。
2.今時の戦争は、高度な知識を必要とする兵器ばかり。
素人に竹やり持たせても邪魔になるだけ。
もうちょっと視界を広く持てよ。
長澤家の万能つゆ