隣同士は仲が悪いもの?
日本でベストセラーになっている早坂隆著『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)を読むと、日本人と韓国人が登場するジョーク(小話)がいくつかある。たとえばレストランで出てきたスープにハエが入っていたらどうなるか。
ドイツ人は「熱いスープだから殺菌されている」と冷静に考え、ハエを取り除いてスープを飲む。中国人はそのまま平気で飲む。ロシア人は酔っぱらっていて知らずに飲む。アメリカ人は支配人を呼んで裁判にする。日本人はあたりを見回し自分だけに入っているのを確認した後、そっとボーイを呼ぶ。韓国人は日本人のせいだといって日の丸を焼く…というのだ。
もう一つ。「世の中で完璧(かんぺき)な人間とは?」という話では。
イギリス人のように料理し、イタリア人のように冷静で、オランダ人のように気前がよく、ロシア人のように酒を飲まず、イラク人のように温厚で、日本人のようにユーモアがあり、韓国人のように忍耐強く…という人間なんだそうな。
説明するまでもないがこれは実際はすべて反対というジョークだ。
こうした“小話”はヘタすると国際問題(?)になりかねないが、いわゆる比較文化論的な観点で実に面白く、国際理解に参考になる。
筆者(黒田)にもとっておきの創作ジョークがあって、たとえば「野球で2死満塁に際し日米韓の監督はバッターにどういうサインを出すか?」だ。米国人監督は「最初から打っていけ!」と攻撃的だが、日本人監督は「よくボールを見てできるなら押し出しでいけ!」という慎重な「待ち」のサイン。
では韓国人監督は?「監督のサインとは関係無しに3塁走者が独自の判断でホームスチールを敢行する」がその答えだ。チームプレーより個人プレーで一発にかけて大向こうをアッといわせる大胆果敢さ…。ベンチャー精神と目立ちたがりの猪突(ちょとつ)猛進は紙一重だ。すべて物事にはプラスとマイナスの両面があるのは言うまでもないが。
ところで先日、台北支局からのコラムに、台湾では政治の季節を迎え政治的影響を考慮して「タクシーでの運転手の“政治談議”を禁止すべきではないか」という話があると出ていた。これは実によく分かる。
政治大好きの韓国では、タクシーの運転手は台湾以上に政治好きであり街の最大の政治評論家だ。とくにこのところ政権末期で不人気の盧武鉉政権だけに、タクシーに乗ると大統領への不満と悪口が多い。こちらが「それでも株価は上がってるし、米国相手の自主外交などがんばっているじゃないの」と逆に慰めて(?)あげている。
その結果、タクシー運転手たちの大統領を冷やかすジョークや小話も花盛りだが、その紹介は遠慮したい。政治好きでジョーク好きの韓国人だから、その中身は強烈すぎる。その代わり韓国人の冗談のうまさを物語るごく一般論的なジョークを紹介しておく。
「漢江で美女と政治家がおぼれそうになっているとき、まずどちらを助けるべきか?」という話で、答えは「もちろん政治家」だという。理由は「川の水が汚れるから」だそうな。
『世界の日本人ジョーク集』で最後に紹介されているジョークは、日中関係に関するもので、靖国問題などで最悪の状態と聞いていたパキスタン人が日本の中華街を見て驚きこう言ったという。「日中の仲が悪いなんてウソだ。パキスタンにインド人街があったら廃虚になっている」
同じパキスタン人は日本での韓流ブームや韓国人の日本旅行ブームなどを目撃すれば、やはり「日韓の仲が悪いなんてウソだ!」というに違いない。
国際的に国と国が仲が悪いというのは、本当はパキスタン人のいうようなことなのだろう。それが国際的な標準なのかもしれない。パキスタン人には日韓の仲の悪さなど“じゃれ合い”のように見えるだろう。
日中関係が最悪といわれても経済交流は活発だったし、同じく最悪といわれた日韓関係も昨年、韓国人の日本訪問者は史上最高の200万人を突破している。
国際的に見て、また歴史的にも隣国同士はしばしば仲が悪い。これはインド、パキスタンを含め地球上どこでもだいたいそうだ。隣り合っているから領土問題をはじめ利害がぶつかりやすい。接触が多いから争いも多い。仲が悪いことは異常ではなく通常なのだ。
だから仲が悪くなったからといって、オタオタうろたえることはない。お互い“廃虚”ができないようにだけ気を付ければいいのだ。(ソウル 黒田勝弘)
http://www.exblog.jp/myblog/entry/new/?eid=a0029437
現在の嫌韓の風潮を、お互い「嫌いだ!」と言えるようになっただけじゃないか、と言われたことがあるのですが、互いに「嫌いだ」と言えるほど仲が良くなったんじゃ無いのかな。