今日は両論紹介します。
[核論議]「議論すら封じるのはおかしい」
北朝鮮の核の深刻な脅威の前に、日本の平和と安全をどう守るか。様々な視点に立った議論があっていいはずだ。
自民党の中川昭一政調会長が核論議を提起した。麻生外相は「論議まで止めるのは言論封殺と言われる」と中川氏の問題提起を支持した。
北朝鮮の核実験に直面して、「核を持たずに北朝鮮に、どんな対抗措置が取れるのか」と問題提起するのは、責任ある政治の誠実な態度ではないか。
だが、自民党内では、二階俊博国会対策委員長が、「誤解を招きかねない発言は慎むべきだ」と批判している。久間防衛長官は「議論すると間違ったメッセージを与える」と苦言を呈している。
教育基本法改正案、防衛庁の「省」昇格法案などをめぐる国会運営や沖縄県知事選への影響を懸念しているのだろう。だが、日本の平和と安全を守ることは、何よりも優先すべき課題だ。核論議を抑制する理由にはならない。
日本が核保有に向かう、との疑念を招く、という指摘もある。だが、財政負担の重圧や、国際社会に大きなあつれきを生むリスクを考えれば、核保有が実際に政策の選択肢になるとは考えにくい。
中川氏も麻生外相も、核を作らず、持たず、持ち込ませず、という非核三原則の堅持を明言しているのは、そうした判断によるものだろう。
非核三原則は、東西冷戦と保革対決の下で、佐藤内閣時代に作られた。当時と比べ、現在の安保環境は劇的に変化した。麻生氏の言うように、なぜ非核三原則を持つことになったのか、今日の状況の下で、そのあり方をどう考えるのか、についても議論があってよい。
その結果として、非核三原則を確認することになったとしても、議論することに意味がある。
民主党はじめ野党は、核論議を厳しく批判し、外相罷免を求める声もある。
だが、小渕政権下の1999年、西村真悟防衛政務次官が「核武装」発言で更迭された際、当時、民主党代表だった鳩山幹事長は、こう語っていた。
「核武装をしてもいいかどうか、と言った瞬間にクビを切られるとなると、国会の中で議論ができなくなる。議題に乗せることすらいけないという発想もいかがなものか」
鳩山氏も、自らの発言を思い起こすべきではないか。
かつて保革対決の時代には、「憲法改正」がタブー視され、口にしただけで閣僚が更迭されたりした。核論議もすべきでないというのは、同じ言論封じだ。やはり冷静に議論することが大事だ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20061107ig90.htm
社説=核保有論議 首相の姿勢が問われる
自民党の中川昭一政調会長が火を付けた核保有論議がくすぶり続けている。「論議は構わない」と主張すること自体、核武装の野心を疑われる結果を招く。北朝鮮の核問題の解決を難しくもする。
核保有論議をいつまでも引きずるようでは、妙な誤解を招くだけだ。安倍晋三首相がはっきりした形で非核の意思を内外に示し、速やかに幕を引くべきだ。
発端は中川氏が民放テレビに出演したときの次の発言だった。
「憲法でも核保有は禁止されていない。核があることで攻められる可能性が低くなる、やればやり返すという論理はあり得る。当然、議論があってもいい」
麻生太郎外相の発言が、火に油を注いだ。「非核三原則を維持する政府の立場は変わっていない」と強調しながらも、「隣の国が持つとなった時に検討も駄目、話もできない、意見交換も駄目というのは一つの考え方だが、いろいろ議論しておくことは大事だ」と述べている。
内閣の要である外務大臣による衆院外務委員会での発言である。見方によっては、中川氏以上に重大な発言とも言える。
両氏はむろん、核武装を目指せ、と言っているのではない。中川氏は「私はもとより核武装反対論者だ」と明言している。
問題は、北朝鮮による核実験が日本を核武装に向かわせるのではないかと世界が注目しているときに、政府・与党の有力者が「核保有の論議を」と公言することが持つ意味である。中川・麻生両氏の発言は、核保有への地ならしが狙いと勘繰られても仕方ない。
自民党内からは「核を持った方がいいと言っている人はおらず、議論にならない」(高村正彦氏)といった声が出ている。
分かりにくいのが安倍首相の対応である。非核三原則堅持の姿勢を強調する一方で、「議論を封殺することはできない」と、発言すること自体は容認する構えだ。
核兵器を「持たず、造らず、持ち込ませず」の非核三原則を、日本はいわば国是としてきた。国民に今も広く支持されている。核は持たない、と内外に約束しながら、核保有の論議はすべきだという理屈は成り立たない。
事態を収拾するには「非核の日本」に向けて、政府が具体的一歩を新たに踏み出すのが早道だ。非核三原則を法制化する、非核の意思を首相談話の形で宣言する、などやり方はいろいろある。中川、麻生両氏の更迭を考えてもいい。
http://www.shinmai.co.jp/news/20061108/KT061107ETI090003000022.htm
収拾する必要性がどこにあるのか理解できないのですが、今日の党首討論は責められている筈の麻生閣下が物凄く楽しげなのが印象的だった。