防衛白書*日米同盟依存がすぎる(8月3日)
今年の防衛白書には、小泉純一郎政権がひた走ってきた日米同盟強化路線が、これまでになく色濃く反映されている。
それは日米安全保障体制について初めて一章を立てたことにも表れている。
日本への脅威を強調し、だから備えが必要だと訴える。白書から読み取れるのは、専守防衛から米国との軍事一体化へと大きく軸足を移す安全保障政策の転換だ。
しかし、脅威を軍事力でたたきつぶすことをためらわない米国への追従は、日本が取るべき道ではない。白書に足りないのは、平和外交の有効性、重要性に目を向ける姿勢だ。
白書は、日米安保体制の維持・強化が必要な理由として、日本および周辺地域、さらには世界の平和と安全の確保に重要な役割を果たしているからだと説明する。
先月ミサイルを連続発射した北朝鮮や、軍事費が膨張を続ける中国、国際テロ組織などを想定したものだ。
確かに、東アジアに脅威や緊張が存在することは否定しない。だが、それは日米同盟に依存することでしか対処できないものではあるまい。
むしろ、首脳同士の対話もままならない中国や韓国との関係改善こそ、何よりの安全保障になるはずだ。
中国は軍事費を増大させ続けているが、経済分野で日本と結びつきを強めているいま、武力攻撃を仕掛けてくることは考えられない。
北朝鮮には、軍事力で対抗するより中国や韓国に外交圧力を働きかけるほうがずっと効果的ではないか。
対米一辺倒の小泉外交には、そうした努力が決定的に欠けている。
日米安保体制の強化は、自国の世界戦略に日本を取り込もうとする米国の強い要請でもある。自衛隊のイラク派遣や在日米軍再編は、その具体化にほかならない。
ここでも問題なのは政府の姿勢だ。例えば、米軍再編をめぐっては沖縄の普天間飛行場移設など、まだ決着していない問題がある。三兆円ともいわれる費用負担の行方も不透明だ。
白書は、そんな現実を置き去りにしたまま「この計画を速やかに、かつ徹底して実行していく」と決意を表明している。
これでは、政府にとって肝心なのは、国民の理解と支持を得ることより米国との約束を守ることではないか、と受け取られても仕方ないだろう。
言葉が上滑りしているのは、米軍再編問題に限らない。自衛隊のイラク派遣や防衛庁の「省」昇格の意義を訴える記述もそうだが、白書に漂うのはある種の高揚感だ。
安全保障問題は、走りすぎれば憲法とぶつかり、国際的な緊張も招くことを忘れてはいけない。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032
>経済分野で日本と結びつきを強めているいま、武力攻撃を仕掛けてくることは考えられない。
つまり、日本経済がダメになったら危ないと言う事ですね。