自民総裁選 安倍氏独走でいいのか
福田康夫元官房長官が自民党総裁選への立候補を断念した。
70歳になる年齢など、さまざまな理由が重なっての決断だろう。何よりも、靖国神社参拝の問題で党内に決定的な対立を生みかねないことへのためらいが大きかったようだ。
これでポスト小泉レースは、安倍晋三官房長官の優位がさらにくっきりしてきた。小泉路線とは違うアジア外交のあり方を主張してきた福田氏が争えば、日本の針路にかかわる本格的な政策論争になりえたのに残念だ。
「反小泉・非安倍」の勢力は、新たな旗頭探しを迫られている。このまま安倍氏の独走を許せば、政策論争じたいが低調になりかねない。次の日本のリーダーを選ぶ総裁選がそれでは困る。
谷垣禎一財務相や麻生太郎外相を含め、「乃公出(だいこうい)でずんば」の気概で名乗りを上げる人が出て、安倍氏と堂々の論戦を繰り広げることを期待したい。
さて、その安倍氏は最近、自らの理念と政策をまとめた著書「美しい国へ」を出版した。いち早く、政権構想の基本を示そうということだろう。
その中で目を引くのは、集団的自衛権をめぐる考え方だ。国際法上、日本には集団的自衛権があるが、行使は許されない。この政府の憲法解釈を強い調子で批判している。
「財産に権利はあるが、自分の自由にはならない、というかつての“禁治産者”の規定に似ている」
2年前の対談集では、もっと勇ましかった。「われわれの新たな責任は、日米安保条約を堂々たる双務性にしていくことだ」「軍事同盟とは“血の同盟”だ」
安倍政権ではいまの憲法のもとで、集団的自衛権の行使を認めるということなのか。肝心のそこがあいまいだ。選挙戦ではぜひ具体的な方針を聞きたい。
小泉首相の靖国神社参拝は擁護する。ならば自分が首相になったら参拝するのか、それは書いていない。昨年は「次の首相も、その次の首相もお参りに行っていただきたい」と言い切っていたのに、考えが変わったのだろうか。それとも明言を避けただけなのか。
戦争認識や歴史観についての言及も薄い。安倍氏は先の大戦をどう見るかと問われると、「歴史家に任せるべきだ」とかわすことが多い。自らの国の歩みについて自分の言葉で語れないようでは、政治指導者として心もとない。
中国とは「政経分離の原則が必要」と説く。「政治問題を経済問題に飛び火させない」のだという。一方で、米国とインド、豪州とは「普遍的価値を共有する国」同士の戦略協議を提唱する。
中国とは経済関係さえ良ければそれでいい、ということなのだろうか。
月末には党のブロック別大会が全国で始まる。立候補予定者らを招き、総裁選の政策討論会にする趣向だ。主役の安倍氏をもり立てるだけの場にならないよう、参加者らの奮起を促したい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060723.html#syasetu1
一番笑わせてくれそうなのは、麻生閣下なんだけどな。