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<竹島>海洋調査めぐり緊張 強硬韓国…「靖国と連動」
日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)周辺で海上保安庁が海洋調査を計画していることに対し、韓国政府は19日、「挑発的行為」と計画の撤回を求めた。日本政府はなぜ今、海洋調査をしようとしているのか。「(日本)政府船舶の拿捕(だほ)も可能」という韓国の強硬姿勢の真意はどこにあるのか。鳥取県境港に停泊していた海保の測量船2隻は同日夕に出港、日韓両国間で緊張感が高まっている。
「(拿捕に関する)法的検討はすべてやった。(日本の)政府船舶が品格と節度を超えた場合には、それなりの対応は避けられない」。韓国青瓦台(大統領官邸)の宋旻淳(ソンミンスン)統一外交安保政策室長は19日のラジオ番組で、日本の調査船を拿捕しても「法的問題はない」とする政府見解を明確にした。
前日の18日夕、盧武鉉(ノムヒョン)大統領は与野党幹部との会議で「国防責任者は命令さえあれば任務を完了する自信があると答えた」と臨戦態勢にあることを表明した。青瓦台関係者によると、この会議で盧大統領はこれまでの「静かな外交」を転換する「決断の時ではないか」と参加者に意見を求め、「いかなる状況にも備えるべきだ」との強硬姿勢で一致したという。
韓国がここまで強硬姿勢を見せるのは、今回の調査計画を靖国、教科書問題と連動した歴史認識問題と位置づけているためだ。韓国では、日本の治外法権を認めた1876年の江華島条約が、日本の海洋調査をめぐる武力衝突事件がきっかけだったという歴史的教訓が浸透している。青瓦台報道官も19日、靖国問題を含む「一連の問題に包括的に対処する」と述べ、海洋調査だけの問題ではないとの認識を示した。
ただ韓国外交当局は、強硬策は回避したいのが本音。潘基文(バンギムン)外交通商相は19日の会見で、調査には韓国の許可が必要との立場を強調、日本が提案している「事前通報システム」に議論の余地が残っていることを示唆した。【ソウル堀山明子】
◇冷静日本「粛々と作業」
日本政府が韓国の反発を承知で海洋調査に踏み切ろうとしているのは、竹島周辺の海底地形に韓国名をつける動きを阻止するためだ。19日も外交当局間で接触を続け、「名称提案をやめれば海洋調査を中止する」と働きかけたが、韓国が応じなければ20日にも調査に着手する。ただ、韓国警備艇と衝突する「不測の事態」を避けるため武器を装備した巡視船を同行させず、調査船には警備艇が近づいたら退避するよう指示している。
「わが国のEEZ(排他的経済水域)内で科学的な調査を行うことは国際法上、問題ない。国際法にのっとり冷静に対応することが大切で粛々と作業を進めていく」。安倍晋三官房長官は19日の記者会見で、国際法にのっとった調査であることを強調しつつ韓国側に冷静な対応を繰り返し呼びかけた。
ただ、韓国の強硬姿勢には、鹿取克章外務報道官が「(政府の所有する)公船の拿捕、臨検は国際法上認められない」と批判。「韓国は5月31日に統一地方選がある。盧武鉉大統領が反日ムードをあおって支持率を上げようとしているんじゃないか」(政府筋)との反発も出ている。
日本政府内には、日本は過去30年間調査していないのに韓国が日本の抗議を無視する形で今年まで4年間調査を続け、海底地形の韓国名の既成事実化を狙っていることへの不満がある。ただ、日本も韓国との「衝突」を避けたいのが本音で、調査船への退避指示には「韓国の妨害で調査できなかったと国際会議で主張できる」(外務省幹部)という計算も働いている。【大貫智子】
◇海保の海底測量、最新の海図作成
海上保安庁の測量船「明洋」と(621トン)「海洋」(605トン)が調査予定としているのは、竹島の北東にある約7万5000平方キロメートルの海域。この海域での調査は約30年ぶりで、「(かつて作製した)海図が正しいかどうか確かめたい」と目的を説明する。
だが、国際機関「国際水路機関」(IHO)が6月にドイツで開く「海底地形名称に関する小委員会」の存在を指摘する声もある。この会議で韓国側が、竹島周辺の海山などに韓国名を付ける提案をするとみられている。日本側も対抗するため、最新の調査をした上で、日本名が付いていない地形について名称を付ける必要があるという。
調査に向けて、海保は周辺を航行する船舶に注意を呼びかける「水路通報」を今月14日に発表した。韓国側の反発は「ある程度は予測していた」と言い、期間を短縮するため2隻の測量船を使い、1週間以内には終わらせるという。音波を使って、海図の「標高」を確認する調査という。
海保などによると、海底地形の命名には国際的な取り決めがある。日本周辺の海域については、海保が命名。さらにIHOとユネスコの「政府間海洋学委員会」(IOC)が推進する「GEBCO」(ジェブコ、大洋水深総図)事業の中で決定される。決定を受けて「IHO/IOC海底地形名集」に掲載され、国際的に周知されるという。【長谷川豊】
◇竹島…韓国が実効支配
竹島は島根県隠岐諸島の北西157キロの日本海に位置し、東島、西島と呼ばれる2島と数十の岩礁からなる。日韓両国が領有権を争っているが、現在は韓国が警備隊を常駐させ、実効支配を続けている。昨年3月には、島根県議会が領有権の早期確立を掲げた「竹島の日」条例を制定。これに韓国側が強く反発、日韓関係が急速に悪化するなど両国間の「トゲ」となっている。
各国は国連海洋法条約に基づき沿岸から200カイリ(約370キロ)以内を水産物や鉱物など海洋資源の管轄権を持つ排他的経済水域(EEZ)に設定できるが、竹島周辺では日韓双方の主張するEEZが重なっている。
このため、日韓両政府は99年、領有権問題を棚上げした新漁業協定を締結、竹島周辺に共同管理する「暫定水域」を設定した。同水域内では、韓国船が主に操業しており、日本側の水揚げは減少しているのが現状。日韓両国政府によるEEZの境界画定交渉は00年以降中断している。
http://www.excite.co.jp/News/politics/20060420000300/20060420M10.147.html
政府淡々「大人の対応」 竹島周辺の海洋調査 国際法前面、世論に訴え
竹島周辺海域の海洋調査をめぐり、日韓両政府はぎりぎりの外交交渉を続けている。しかし、双方の主張は平行線をたどっており、「国際法」をよりどころとする攻防も繰り広げられるなど、今のところ解決の糸口は見えてこない。
日本政府は淡々と海洋調査の準備を進めつつ、国際法を前面に押し出し、日本側の正当性と韓国側の不当性を国際世論に訴え、牽制(けんせい)する戦略に出ている。
「わが方は国際法にのっとって粛々と調査の準備を進める。日韓がお互いに国際法にのっとって冷静に対処することが大切だ」
二十日午後の記者会見で安倍晋三官房長官はこう強調した。安倍氏は前日から同じせりふを繰り返している。
麻生太郎外相もこの日、参院外交防衛委員会で「韓国側はすでに四回も問題の海域の海洋調査を行っており、看過するわけにはいかない。国際法上、われわれに何の瑕疵(かし)もない」と答弁した。
両氏が韓国側の挑発にのることは避け、「国際法」に何度も言及するのは、日本の海洋調査に国際法上、問題がないからだけではない。韓国政府がちらつかせる測量船の拿捕(だほ)や調査活動の妨害が、国連海洋法条約に明確に違反するためだ。
加えて、韓国側は昭和二十七年の「李承晩ライン」宣言以来、五十年以上にわたって、竹島の占拠など国際法違反を繰り返しており、「過去にさかのぼって、韓国の不法行為を国際的に認知させるチャンス」(政府筋)との判断もあるという。
ただ、日本政府も、韓国が日本側の主張を簡単に認めるとは考えていない。谷内正太郎外務事務次官は、十七日に韓国の羅鍾一駐日大使と会談した際も、調査撤回の条件として、韓国が六月にドイツで開かれる「海底地形名称小委員会」で海底地形の韓国名表記を提案しないよう求めた。しかし、韓国側は頑として譲らなかった。
ある外務省幹部は「昭和四十年ごろまでは韓国にも日本の主張を聞く姿勢があったが、今は日本が何を言っても『けしからん』『妄言だ』『挑発だ』となる。話にならない」とため息をつく。
政府首脳は二十日、外務省に、米政府に今回の海洋調査の背景を詳しく説明し、理解を求めるように指示した。ただ、こうした国際世論に訴える形の「圧力」が奏功するかどうか、なお不透明だ。
◇
≪東京基督教大教授・西岡力氏 韓国保守層に丁寧に説明を≫
盧武鉉政権は今回の海洋調査計画を受け、日本が竹島の領有権問題に対する態度を変えたと勘違いしている。日本は竹島が日本の領土だという主張を変えていないが、「今すぐ現状を変え、竹島を返せ」と言っているわけではない。盧武鉉大統領は反日的な発言をすれば人気が出るので、勘違いをしたふりをしているのかもしれない。
盧武鉉政権を支える韓国の偏向するマスコミがテレビで積極的に取り上げ、ナショナリズムをあおっている。韓国民の頭の中に「日本が竹島を取り戻そうとしている」と、すり込まれてしまっては問題だ。
海洋調査は領土問題とは関係ないのだから、日本としては計画通り実施すべきだ。ただ、韓国の盧武鉉政権を支える左派陣営ばかりではなく、保守層にも「竹島に対する日本の立場は変わっていない」と丁寧に説明していくことが求められる。韓国側の感情的な反発を、他の日韓関係に波及させないようにすることが必要だ。
日韓関係の緊張が、北朝鮮による拉致事件の解決に向けた日韓連携の強化への足かせになるとの指摘もあるが、あまり影響はないだろう。盧武鉉政権はもともと、拉致問題に対する姿勢が消極的で、日本としては協力しにくい相手だった。日本はむしろ、韓国の保守勢力との連携を強化していく必要があり、その意味でも海洋計画について韓国側に丁寧に説明しなければならない。
韓国は、日本の海洋調査で騒げば騒ぐほど、竹島をめぐる領有権問題の存在を自ら国際社会に知らせることになると気づくべきだろう。(談)
◇
≪「李承晩ライン」設定 不法支配≫
日本海をめぐる日韓の対立は昭和二十七年一月、李承晩大統領が一方的に漁船の立ち入り禁止を宣言した「李承晩ライン」に始まる。このラインの韓国側には、明治三十八年に島根県所管と定めていた竹島も含まれており、海洋資源保護は建前で、竹島の領有こそが目的だったとされる。
韓国側は、日本の抗議を無視し、日本漁船を大量に拿捕。韓国警備船が発砲し死者を出す事件もあった。昭和二十九年には竹島に警察隊を常駐させて武力占拠した。
結局、李承晩ラインは、日韓基本条約と日韓漁業協定が調印されるまで十三年間続く。拿捕された船舶は三百二十八隻、抑留者は三千九百二十九人、死傷者は四十四人に上った。
ただ、調印後も韓国は竹島の領有権をめぐっては話し合いに応ぜず、竹島周辺海域での漁船の操業についてはお互いに自由にすることで対応。その間に竹島に灯台やヘリポートなどを建設し、実効支配を強めてきた。
平成十一年には新日韓漁業協定が発効。排他的経済水域(EEZ)については、両者の主張が重なる部分を共同管理の暫定水域とした。これで日韓両国の日本海を舞台にした争いは沈静化したかにみえたが、今回の海洋調査をめぐる対立は、これまでの妥協案が、問題の「先延ばし」に過ぎなかったことを示している。
◇
≪日本海をめぐる日韓関係の経緯≫
【明治】
38年 1月 閣議決定で「竹島」と命名。島根県隠岐島司の所管とする
【昭和】
27年 1月 韓国の李承晩大統領が「李承晩ライン」を宣言
28年 2月 済州島沖で日本漁船が韓国側の銃撃を受け、漁労長が死亡
6月 島根県が海上保安庁と共同で竹島を調査。領土標識(木柱)を建てる
29年 7月 韓国の警察隊が竹島に常駐
9月 日本政府、竹島問題の国際司法裁判所への提訴を韓国に提案。韓国は拒否
40年 6月 日韓基本条約と日韓漁業協定に調印。李承晩ラインは廃止。竹島問題は紛争処理事項とされるが、韓国は話し合いに応ぜず
52年 2月 福田赳夫首相が、竹島は「疑う余地のない日本固有の領土」と表明
【平成】
9年11月 韓国が竹島に500トン級船舶が利用できる接岸施設を完成
10年12月 韓国が竹島に有人灯台を完成
11年 1月 新「日韓漁業協定」が発効。両国が主張する排他的経済水域が重なる海域周辺を暫定水域と定め、共同管理下におく
14年 8月 韓国は「日本海」の呼称を「東海」にすべきだと主張。これを受け、国際水路機関(IHO)は「大洋と海の境界」の改訂版で「日本海」の削除を検討。日本政府は抗議
9月 IHOが「日本海」の呼称の継続を決定
17年 3月 島根県議会が「竹島の日」を定める条例案を可決
18年 4月 日本が竹島周辺の海洋調査を計画。韓国側は反発
http://www.sankei.co.jp/news/060421/morning/21pol001.htm
竹島問題、状況整理>「また韓国が勝手に騒いでいる」で、済ませても良い気もする。