中国東北部の瀋陽市に、「九・一八歴史博物館」という施設がある。中国で、「国恥日」と呼ばれる一九三一年九月十八日の柳条湖事件がきっかけとなった満州事変にちなんだ抗日記念館で、一九九九年に開館した。
▼この博物館を最近訪れた人によれば、内容自体がそもそも問題だが、解説の日本語訳に誤りが多い。「日本の戦犯は中国人民に多大な損失を与えられた」などと主語が入れ替わったものもあるそうだ。瀋陽の日本総領事館に問い合わせると「正しい日本語表記を博物館に提供して以前から指摘しているんですが」とあきれ顔だ。
▼日本から言われたのが悔しくて無視したのか、単なる怠慢だったのかはわからない。ところが先週、この件について中国青年報がこう報じた。「侵略者の犯罪を展示する博物館で、誤りを侵略者側から指摘されるだけでも穴に入りたいほど恥ずかしいことなのに、それを正さず保存している」。
▼さらに「日本人はわずかなこともなおざりにせず、だからこそ戦後、世界第二位の経済大国になった。中国は日本に歴史を忘れるなというだけでなく、まず自らの歴史への居住まいを正さねばならない」などと続ける。
▼さすがに身内に批判されてからは訂正準備に入ったそうだが、中国では間違い自体より、誤りを指摘されることの方に屈辱を感じるらしい。外部からの指摘を真摯(しんし)に受けとめ、素早く修正する機能やメンタリティーに欠けるようなのだ。
▼一党独裁の弊なのだろうが、ことはそれで済まない。国際化した重量級のかの国がいったん誤った方向に転がり出すと、修正は並大抵ではないことも物語っている。北京で開催中の全人代で示された国防予算が十八年連続の二ケタ増とは、誤訳どころの話でない。
http://www.sankei.co.jp/news/column.htm
冷静に「日本語間違ってますよ」と指摘する所が、日本人の凄いところだよな。