ネットに走る批判と中傷
「2ちゃんねる」を見ると、中国に対する「弱腰外交」を批判する書き込みであふれていた。
「日本の完敗だな」「日本なにやってる?早くしないと掘り尽くされちゃうよ」「もう戦争はじめてくれ」東シナ海のガス田開発問題をめぐる日中協議。中国側が新たに示した共同開発提案に、日中双方が領有権を唱える尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺の海域が含まれていると報じられたためだ。
中国との議員外交を続ける自民党ベテラン議員のHP。テレビで小泉首相の靖国参拝に触れると、とたんにメールが殺到する。「総理の靖国参拝は続けていただき中国に毅然たる態度で臨むことこそ日本の国益にかなう」「靖国は国内問題であって外国が干渉すべきではない。中国にへりくだらないように」 昨年の訪中をきっかけに、2月末までに届いたメールは計107通。その多くが匿名だ。
ネット書店「アマゾン」。2月22日に発売されたマンガが、いきなり一位に。 「マンガ嫌韓流2」。日韓が領有権を争う「竹島」(韓国名・独島)についての政府の姿勢を「相変わらず弱腰」と批判する。発売日は、「竹島の日」だった。松江市で開かれた集会をのぞくと、ある県議も竹島問題を 「棚上げ」してきた日本外交を批判し、語った。「日本が戦後一貫して戦争に対する贖罪意識から自己主張してこなかった結果だ。摩擦を恐れずに主張すべきは主張しあい、相互理解を深める努力こそ最も大切だ」
この言葉を聞き、2月8日の衆院予算委員会の審議を思い出した。靖国参拝問題を取り上げた社民党の辻元清美衆院議員に、首相が反論した。「中国、韓国がいいと言えば、行ってもいいのか。中国がいけないと言っているから、いけないのか。辻元さんの立場は、どうなんですか」主張すべきは、主張する。小泉首相も「自己主張」にこだわりをみせる。だが、それに伴い日中双方の国民感情の高まりに歯止めがきかなくなっているように思える。
・内閣府が昨年12月に発表した世論調査でも、中国に「親しみを感じない」という回答が過去最高になった。一方、中国でも「反日サイト」への過激な行動を呼びかける書き込みが反日デモのきっかけを作ったとされた。首相も、あおりたてたわけではない。
01年10月に訪中、日中全面戦争のきっかけとなった盧溝橋に足を運び、中国人民抗日戦争記念館も見学。「中国の人々に心からのおわびと哀悼の気持ちを持った」、と語った。昨年10月の靖国参拝で初めて本殿への昇殿を見送った。でも「配慮」は実を結んでいない。首相は1月24日、衆院本会議で「両国の関係が偏狭なナショナリズムに流されることのないよう、さまざまなレベルで交流を進めていく」と語った。首脳レベルの交流の再開は、しかし、9月の首相退任まで絶望的だ。
★ナショナリズム管理を
・「狭いナショナリズムの防止について日中双方が努力することで合意した。大きな成果だ」8日の記者会見で自民党の中川秀直政調会長は、2月下旬に開かれた日中与党交流協議会の意義を強調した。中川氏が説くのは、「ナショナリズムの管理」だ。 「自己主張」をぶつけ合うだけでは、アジア外交の扉は開けない。行きすぎたナショナリズムを抑えるのも、政治の役割のはずだ。今月4日、水戸市で中曽根康弘元首相の講演を聴いた。
「いま世界を覆うのは、各国のナショナリズムだ。中国一は反日ナショナリズムで国を統一している。日本だって靖国神社を中心にナショナリズムで固まりつつ、強い力がある」。かつて靖国神社を公式参拝し、憲法改正論の先陣を張る中曽根氏さえ、ナショナリズムの高まりを危惧する。中曽根氏は語る。「世界の指導者がナショナリズムを抑制する方向で話し合う。そういう英知を持たないといけない時代になった」きしむ感情の歯車を回す「ポスト小泉」の英知が試される。(一部略)
ネット言論はマスコミにも政府にも管理されてないというだけの事。