【萬物相】映画と民族感情
米国の映画『招かれざる客』(1967年)で、白人の老夫婦は、娘が黒人の婚約者を連れてくると驚いてど肝を抜かれる。母親は娘が婚約者と寝たかどうかがもっとも気になる。娘は、「彼が承諾しなかった」と否認する。16の州が黒人と白人の結婚を禁じた時代だけあって、監督は画面ではなく、シナリオでさえ黒人と白人との肉体関係がなかったことを強調しなければならなかった。
にもかかわらず、波紋は大きかった。白人の優越注意団体のKKKの団員らが、映画館の前に集まって脅迫したこともある。
◆ 黒人の男性と白人の女性のベッドシーンが登場するまでは、その後34年がかかった。
『ジャングル・フィーバー』(1991年)で黒人の建築家が白人の女性秘書と付き合っていることを友達に言うと、友だちは「水素爆弾」と驚く。彼がまた女性秘書と「関係」をしていると打ち明けると友だちはもっと驚いて叫ぶ。「核災害だな!」
黒白カップルは、双方の家族に爪弾きにされ、挫折する。結局、映画の設定と内容は、黒人の男性と白人の女性の結合というタブーを乗り越えることができなかったのだ。
◆ 21世紀になっても、しかもフィクションに過ぎないにもかかわらず、米国映画は、黒人と白人の結合をまともにテーマにすることができない。
白人の男性と黒人の女性関係は、それなりに受け容れられているが、黒人の男性、白人の女性の関係描写はほとんど聖域に近い。白人の主流社会は、黒人に白人女性という組み合わせは、男性が悪党であるか女性に問題があると思う。「黒人男性=セックスマシーン」という図式に取り付かれた不貞な「捕虜」、ないしは「変節者」と思われる。長年の人種的偏見の一片から微妙な性的劣等感が垣間見える。
◆ 数日前、ハリウッド映画『Memoirs of a Geisha(邦題:さゆり)』の試写会が開かれた後、中国のインターネットが大騒ぎになったという。
日本の伝説的な芸者を演じる中国人女優のチャン・ツィイーによる、日本人俳優とのベッドシーンを見て、中国のネティズンたちは、激しい怒りをぶつけたのだ。「中国人から愛される女優が日本人の男の下に敷かれて裸で横たわるとは」「数多くの中国人女性が日本軍によって犯されたつらい記憶を呼び起こした」「金の虜になったチャン・ツィイーを映画界から追放しよう…」
◆ 反日感情が強まっている中国で、彼らの目には映画をそのまま映画と映らないのかもしれない。画面で寝転ぶ女性が日本の芸者ではなく、中国の女性チャン・ツィイーに見えるのである。
しかし、中国人の男性俳優と日本人の女優との濡れ場だったとすれば、このように怒っただろうか? はたして、映画の中での黒人と白人の結合に対する白人男性たちの抵抗感のように、女性に対する偏見が作用してはいないのか。
『Memoirs of a Geisha』の主演女優のオーディションまで受けた韓国人女優がいたと聞いているが、彼女が出演した場合、われわれの反応はどうだったろう。気になるところだ。
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2005/12/04/20051204000003.html
> 『Memoirs of a Geisha』の主演女優のオーディションまで受けた韓国人女優がいたと聞いているが、彼女が出演した場合、われわれの反応はどうだったろう。気になるところだ。
韓国人男性と日本人女性のドラマでも反発があります。
これが逆転した日には、そりゃあ、大騒ぎでしょうね。