日弁連人権擁護大会:市民参加の公開シンポも--きょうから鳥取で /鳥取
◇「憲法は国家権力を縛るもの」--松本・県弁護士会長に聞く
第48回人権擁護大会(日本弁護士連合会主催)が10、11の両日、鳥取市の県民文化会館などで開かれる。政界などで改憲論議が高まる中、今回初めて改憲問題を議論し、10日には市民も参加できる公開シンポジウムもある。大会の意義や憲法の意味、改憲論議について県弁護士会の松本光寿会長に聞いた。【構成・山下貴史】
◇個人が犠牲の改憲ダメ/論議の熱気、肌で感じて
――改憲問題を取り上げる理由は?
憲法の理念は、個人の尊重と憲法を最高法規として国家権力を制限することで、具体的には国民主権と基本的人権の尊重が挙げられる。徹底した恒久平和主義も含めることができるだろう。
自民党や財界、一部のメディアなど影響力が大きいところから改憲論議が非常に激しくなってきたが、「何のために、誰のためにあるのか」という憲法の本質をおざなりにした議論がまん延している。それに危機感を持ったのが一番の動機だ。
――国民に義務を課そうとする動きがある。
憲法を国民の行動規範にしようという動きだ。この発想自体、「憲法は権力を縛るもの」という近代憲法の何たるかを分かっていない。公の秩序への協力を明記しようとしたり、憲法改正の発議要件を3分の2から過半数に緩和しようという考え方もあり、憲法の理念を大きく後退させることになりかねない。
――憲法制定から60年。新しい権利を盛り込む動きもある。
世界に誇るべき憲法ができた時でも、憲法と日本の実情・実態とは非常にかけ離れていた。憲法に社会の実態を合わせるという努力目標でもあったという点は押さえておきたい。
憲法で明確に書いていない環境権とかプライバシーの権利などを新たに規定しようという動きは、いかにも前進的、進歩的な考えのようにみえるが、それは一面的だ。新しい人権を入れようという立場は、9条の改憲を容易にするためのものだ。二つをセットにして時代に合わないから変えていくというのは、まやかしに過ぎない。憲法に書いてある個人の尊厳とか幸福追求権を基本に、時代にあった具体的な権利や法を作っていくほうが憲法を生かす道だ。環境権など新たに盛り込まなくても、いまの憲法で対応できる。
――改憲論議の狙いは9条か?
改憲論者の中には、軍隊がないと北朝鮮が攻撃した時はどうするんだという論調で、国民の不安をあおるのが多い。徹底した恒久平和主義、軍備不保持をうたっている憲法の下、(海外で武力を使わずに平和に寄与してきた)これまでの日本政府の行動をまず考えるべきだ。
戦争というのは最大の人権侵害。「個人を国家の犠牲にしていいはずはないんだ」という観点から、徹底した平和外交、本当に名誉ある日本の姿を示すことができれば、日本を侵略するなんて、どんな悪らつな国家でも恥となる。
――9条の意義は世界から高く評価されている。
日本の国家自体がノーベル平和賞を受賞するぐらいの気概がないといけない。99年5月にオランダ・ハーグで世界のNGOが結集した世界市民会議で、公正な世界秩序のための基本10原則を作った。その第1に「各国議会は日本の憲法9条のように、自国政府が戦争をすることを禁止すること」とあった。
イラク戦争を見ても、戦争というのは暴力の連鎖で、本当の物事の解決には役立たない。自衛隊が軍隊として認知されて、建前として専守防衛というようなことであっても、やっぱり外国に行って戦わないと専守防衛にならないという解釈も十分成り立つ。これでは歯止めが利かない。現在は解釈改憲で海外派遣されているが、まさに戦争のできる「普通の国」にしたいということだ。
――9条改正による国民生活への影響は?
軍隊組織の究極には国家概念があって、個人の尊厳を超えた抽象的な公共とか、お国のためとか、理解できない概念がまん延するようになる。すると、国民の自由を制約するのは非常に易しくなる。非国民と言われたら嫌だから、心ならずも一定の政策に反対すべきところを賛成したり、積極的に賛成しないまでも、黙して語らずということになる危険が非常に強い。
9条改正で、実質的に軍隊を正面から認めることになると、世界各国に出かけて戦争をする普通の国になる。間接的には、国家というものが人を殺せるんだという価値観の下、国民の人権よりも上位の価値観があるんだということに、知らず知らずのうちに国民が慣らされていき、戦前の道をたどる可能性がある。やけどの痛みというのは、ずっと覚えておき、またやけどしないようにしないといけない。
――県内で憲法を勉強する動きが出始めた。
鳥取大で講義をした時、憲法は人の支配から法の支配に変えた制度であるとして「ここ数世紀における人類最大の発明だ」との言葉を紹介した。権力者が法によって縛られ、支配されることが必要という観点から、フランスの人権宣言に始まる憲法は、何十億年もかかった人類の歴史の中でほんの二百数十年前にできた制度。この最大の発明品を後退させるようなことは絶対にいけない。
――県民には何を学んでほしい?
学者や弁護士の意見の中で、必ずや琴線に触れる表現がある。全部分かろうという気持ちでなくても結構なので、論議の熱気を感じてもらい、肌で感じ取ってほしい。それだけでも大きな一歩だし、有意義なことだ。
◇大会日程
大会初日は10日午後0時半~同6時、3分科会に分かれた無料の公開シンポジウム(希望者のみ資料代2000円)を行う。第1分科会(県民文化会館)は「憲法は、何のために、誰のためにあるのか」と題し、改正論議を検証・討議。第2分科会(県立鳥取産業体育館)は高齢者・障害者福祉、第3分科会(県民文化会館)は「日本の住宅の安全性は確保されたか」と題して防災面などから意見交換する。
11日は午前10時から、弁護士約1200人が県民文化会館に集まり、憲法問題に関する宣言などを採択し閉幕する。問い合わせは県弁護士会(0857・22・3912)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051110-00000163-mailo-l31
悪らつな国家なら、これ幸いと攻撃すると思うわけだが。