これは日本の校長先生たちがマレーシアに修学旅行に準備に行った時のお話です。
今から4年ほど前、東京と大阪の高等学校の校長先生の会が、
マレーシアを高校生の修学旅行先として選ぶかどうかを検討するために、
マレーシアへ視察にやってきました。
その大阪から来た通訳の英語の先生、年の頃、40歳くらいの中年の女性の先生が、
突如として立ち上がり、立派な英語で演説を始めたのです。
「私は大阪の高校で英語を教えている者ですが、
高校生をマレーシアに修学旅行に連れてくることになれば、
まず日本がマレーシアでどのような侵略を行ったのか、マレーシアの人々がいかに苦しんだのかのを教え、
そして日本の高校生全員にマレーシアの高校生に戦争への謝罪をさせるつもりです。
また今日はこの場を借りて、マレーシアの皆様に戦争の謝罪をしたいと思います。」と言って頭を下げました。
異常な雰囲気が教育省の会議室に充満しました。日本の校長先生たちはその英語の先生が
何を言っているのかわからずきょとんとしていました。
私は通訳としてこの演説を日本語に訳すべきかとちょっと思案している間に、
教育省のマレーの民族衣装を着た若い女性のエリート官僚が、立ち上がり、
背筋を伸ばし、その大阪の英語の先生に向かって意見を述べたのです。
「
あなたのやろうとしていることは間違っています。若い高校生に過去の歴史を教えることは
大切なことです。しかし戦争の歴史だけを強調して教え、友好の歴史を片隅に押しやるのは
間違っています。日本の侵略は4年足らずでした。
しかし日本とマレーシアの友好の歴史はその何倍もあり、占領にやってきた日本軍の人数より
はるかに多い日本人が現在マレーシアに住み、マレーシア人と一緒に経済活動をしているのです。
私は、「DORAEMON」の漫画を読み、SONYのWALK-MANを使う世代です。
侵略者・日本でなく、ハイテクや文化を発展する日本を知っている世代です。
私の父も戦争を知りません。ましてはマレーシアの高校生にとって日本は憧れの国です。
そんな日本から高校生が修学旅行に来てくれ、交流がもてること、
それ自体がマレーシアの高校生にとってはうれしいことです。
自分の祖父さえも直接関わっていない戦争への謝罪をするために日本からやってくる高校生を
マレーシアの高校生は奇異な目で見ると思います。私たちは祖父の時代の怨恨を引きずり、
日本人を裁くような国民ではありません。私たちは高校生たちに過去の重荷を負わせるのはなく、
未来の平和と友好を築くための手助けをする教育者ではないのでしょうか。
日本の高校生は戦争への謝罪など忘れて、
南の国に住む同じ世代の友人との対等の出会いを求めて来て欲しいのです。」