<社説>「違法献金」と都知事のパチンコ叩き 2011-04-27
共生の日常なぜ見ない
東日本大震災が起きた3月11日、全国紙の1面トップに「首相に違法献金の疑い 104万円 在日韓国人から」(朝日)、「石原知事 出馬へ 混乱回避へ決断」(読売)の記事が踊っていた。
大震災は夥しい人命と家財、生産手段を奪い、多くの人々のこれからの人生と日本の将来に土泥を流し込んだだけではない。きちんとケジメをつけるべき問題をも流失させた感がある。被災地への緊急支援物資伝達や炊き出し、義捐募金活動に精力的に取り組んできた団員の多くも、わだかまりを引きずっていた。
「違法献金」問題では、日本社会の一員である永住同胞と政治家との関係の在り方が整理されるべきだった。「石原出馬」については、外国人を差別・排斥する発言を繰り返してきた氏の資質を徹底検証しなければならなかった。
「在日隔離」にも
辞任した前原誠司前外相に「違法献金」したのは、30年以上も近所付き合いをしてきた京都在住の同胞だ。鬼の首を取ったかのように騒ぐ一部政治家とメディア、あっさりと辞任してしまった前原氏に対し、団員たちは残念に思い、そして憤った。多くの日本人からも「『在日』をそこまで隔離するとは」と呆れる声があがった。
「国籍を超えた人情、善意が結果的に法律に抵触し、大臣の辞任にまで発展したことは残念」(金徳彬洛東支部支団長)、「これを正式に外国人の政治献金とするなら、ほとんどの議員が辞職しなければならない。複雑な事情を抱えているのが『在日』と議員の関係だ」(王清一京都本部団長)、「前原氏がなすべきは、在日の歴史的背景と特殊性を考慮することであり、冷戦構造の残滓とも言うべき古色蒼然の政治資金規正法の在り方を問うことだ。辞任は善意の住民としての在日の切り捨てに他ならない」(薛幸夫鳥取本部団長)。
現行の政治資金規正法に基づく違法性のみを追及すれば、歴代の首相や大物首長は言うまでもなく、《潔白》を主張できる政治家は少なかろう。100年以上の歴史をもつ在日同胞はそれだけ、日本の地域社会と密着し、政治家とのかかわりもその分だけ深い。
私たちの望みは、こうした実態を明らかにし、在日同胞と政治家との健全な関係を築くことであったにもかかわらず、「違法献金」授受が一方的に問題にされ宙に浮いたままである。
節電対策に便乗
石原都知事は、「本音を隠さない実行力のある人物」との《風評》を裏切って、案の定、不出馬宣言を撤回し、無難に4選を果たした。東日本大震災の影響で無風となり、数々の不穏当な発言とそれを発して平然とする体質に一筋のメスも入れられなかった。
当選後の記者会見ではさっそく、「こんなものに1000万㌔㍗も電力を使って」とパチンコ業界をも槍玉に挙げた。外国人を何かと敵視する石原氏のことだ。この業界に在日同胞が多数携わってきた経緯があり、今でもホール経営者の半数近くが在日同胞であることと関連していよう。
すでに各種の自粛および節電対策を講じ、20億円を超える義援金を拠出する予定のパチンコ業界は、東京電力管内のホール4000店舗のピーク時の最大使用電力は84万㌔㍗で、当局が試算する今夏の最大使用電力6000万㌔㍗の1・4%に過ぎないと反発した。
パチンコ業界は幾多の試練を経て、30万人を雇用する一大産業に成長して久しい。庶民の娯楽であるだけでなく、ストレス社会の憩いの空間、無縁社会の触れ合いの場となっており、何よりも日本独特の遊文化として定着した。
石原知事は、カジノ建設構想の熱心な推進者でもある。「文化は人間のアミューズメントから発する。カジノは不況の中、雇用や文化、財源の確保に格好の材料」というのがその弁だった。そうした発想を持つ人物が節電対策に便乗し、パチンコ業界を狙い打ちにするのは、在日同胞経済をさらに疲弊させる半面で、カジノ構想に勢いを付けようとする両睨みのパフォーマンスと見るほかない。
再起へ手を携え
東日本大震災は改めて、日常生活の現場では同胞も日本人も分かたれず、肩を寄せ合い、助け合いながら生きている姿を浮き彫りにした。ともに被災し、そして今、ともに再起すべく手を取り合っている。この現実に敢えて割り入り、一方を貶める政治手法は、復旧の次元を超え、生まれ変わろうとする日本にふさわしくない。「内なる国際化」を通じて「世界の中の日本」へと、より明確に舵を切るよう願う。
http://www.mindan.org/shinbun/news_bk_view.php?subpage=126&corner=7
べつにあえてパチンコで憩いとか触れ合いとか求めなくてもいいと思うんだ。